自治体活躍するコーディネーター

舩坂 礼子さん Reiko Funasaka

瀬戸市教育委員会 教育部 教育政策課 CS統括コーディネーター
現在の活動、お仕事の内容を教えてください。

NPO法人の代表をしながら、瀬戸市教育委員会で「CS統括コーディネーター」として従事しています。瀬戸市では、「自ら考え、学び、生き抜く力の育成」を第二次瀬戸市教育アクションプランの柱とし、「社会に開かれた教育課程」を実現するために、地域とともにある学校づくりの推進事業であるコミュニティ・スクールの設置を進めています。私は、学校と地域とを繋げる窓口である「地域学校協働活動推進員(地域コーディネーター)」の配置や人材育成を中心に、地域の方々や教職員等、関わるすべての皆さんのコミュニティ・スクールへの理解を深め、協力を得るための研修会を運営する役割を担っています。

ここに至るまでにはさまざまな体験をさせていただきましたが、教育現場のサポートをしたいと考えていた私にとって最も貴重な体験として挙げられるのが、瀬戸市のキャリア教育プログラムの視察です。キャリア教育コーディネーターの認定資格試験の学びの中から、瀬戸市が全国でも有名なキャリア教育の先進地区であることを知った私は、現場でもっと学びたい、という気持ちにかられました。そこで、キャリア教育コーディネーターの認定資格を取得すると同時に、瀬戸市のキャリア教育の実際の現場を目の当たりにする体験をさせていただきました。キャリア教育プログラムを具体的に学ぶ中で、プログラムの一つである「貿易ゲーム」に関心が深まっていき、幸いに貿易ゲームの講師として学校と関わらせていただくことになり、この講師としての体験を通して、教育行政や学校現場についてより深く知ることができました。しかし反対に、一個人ではできることに限界があることや、私はやはり教育現場をサポートし、地域資源と学校とをつなげる「コーディネーター」がやりたいのだということに、改めて気づくことができました。

そこでまずは、「自分のやりたいことを1日最低1人に伝える」と決めて、それを半年間続けました。その中でNPOを作る手立てがあると知り、法人を立ち上げることに決めました。SNSを使ったり、多方面の方と繋がったりして人脈を広げるとともに、地域のニーズや課題をビジネスにより解決する地域ビジネスでの創業を目指す人が、知識や実務を学ぶことができる創業塾「せとしごと塾」で起業の方法を学ばせていただきました。

そうしてNPO法人を立ち上げ、教育イベントをいくつか開催し、教育行政の方にもお越しいただいたのですが、そのころ瀬戸市では、「地域とともにある学校づくり」を掲げ、地域と学校を結びつけるコーディネーターを探していました。そういうタイミングが合ったのでしょうか、現在の統括コーディネーターとしてお声掛けいただくことになりました。地域ぐるみで学校をサポートすることができる、こんな素晴らしいことに関わらせてもらえるならば、と喜んでお引き受けしました。

瀬戸市には、もともと瀬戸商工会議所に「キャリア教育推進コーディネーター」の方が在籍しており、キャリア教育の実施支援が実現しています。商工会議所の取り組みがあったために、行政側はコーディネーターの必要性を認識されていたのも大きかったと思います。現在、学校で行われている様々なキャリア教育のプログラムは、各学校の地域コーディネーターの方が、商工会議所のキャリア教育推進コーディネーターの方と協働して担っています。今まで、教頭先生や教務主任の先生が担ってこられたことを、地域コーディネーターがお引き受けする、というイメージです。地域コーディネーターはその地域に対する専門性や人脈、商工会議所のキャリア教育推進コーディネーターはキャリア教育に関する専門性や企業との繋がりに強みを持っています。両者が協働することが、大きな相乗効果を生んでいると感じています。

キャリア教育コーディネーター育成研修を受講したきっかけを教えてください。

親として、教育現場に関わることになったのが一つのきっかけです。先生方が困っている姿やがんばっている姿を、子育て中にたくさん見てきたので、私も何か先生方のサポートをしたい、と思いました。しかし、本当の意味で先生方の役に立ち、サポートできるようになるためには、「専門性」が必要なのではないか、と感じ、教育を取り巻く状況について調べていきました。

最初は、家族や子ども、子どもを通して出会う地域の方などに対して、自分の言葉や行動が人に影響を与えると感じたので、心理学を学ぼうと思い、産業カウンセラーなどの資格も取得しました。ただ、その資格を取得するだけでは、先生方のサポートに繋がりませんでした。取得した資格を使って、企業などで仕事をする場がなかったわけではありませんが、教育現場や先生方を支援したい気持ちはずっと消えませんでした。私は教育現場に携わりたいが、先生になりたいわけではなく、あくまで先生方をサポートしたい、そのための専門性を高めたいという気持ちが膨らんでいきました。そこで改めて、どうしたら教育現場に携われるのかを考えながら、さまざまな情報収集の中でキャリア教育に出会い、キャリア教育コーディネーターという役割にたどり着きました。

キャリア教育コーディネーター育成研修を受講され、役立ったことはありますか。

研修を通して、学校と地域を繋ぐ役割は実在していて、その専門性を高めるためのこういった資格があることを知り、「中間支援」の役割の必要性や重要性を実感しました。

研修は座学だけではなく、実際に学校現場にも行くことができました。それまでは、教育現場では先生方はある程度、一定の考え方を持っているのだろう、と感じていましたが、現場にはさまざまな先生がいらっしゃり、多様な環境、立場、考え方があるということ、学校ごとにもそれぞれの違いがあり、コーディネーターは多様な方々に対応できる力をつけなければならないことに気づきました。

今後の展望、チャレンジされたいことを教えてください。

コミュニティ・スクールを設置するだけではなく、「仕組みを活用するための手立て」を、多くのみなさんに伝えていきたいです。また、そこに関わる地域コーディネーターの方が学ぶ機会や、地域の中の横のつながり、ゆるやかなネットワークづくりに関わっていきたいと考えています。そして、地域の中でそれぞれが「教育の当事者」になる循環をつくっていくことを目指しています。

私は、教育現場に携わることで自分自身が成長していけると感じましたし、コミュニティ・スクールに関わるみなさんにも同じように感じてもらえたら、良い社会づくりに繋がるのではないかと考えています。

最近、地域コーディネーターになった方が、大きく変わられているなと感じることがあります。一保護者、一ボランティアとして関わっていた方が、コミュニティ・スクールにまつわるさまざまな体験を通して、学校全体を見ることができたり、地域の多くの方と関わることができたり、そしてそれを喜びと感じ、笑顔で活動されている姿が多くなってきました。また、体験の中から学んだことを他者に伝えることができる力もついていると感じてます。

学校と地域の方が協働する様子を見ることは、子どもたちにとっても幸せを感じる瞬間であり、それがとても良い効果を生んでいます。様々な場面で、それぞれの役割の方が主体的に関わり合う循環が見られ、こうした学校と地域の良い関係づくりを目の当たりにすると、私自身もとても喜びを感じます。今後もお互いの強みを生かし合い、足りないところを支え合えるような、ゆるやかなつながりを作っていけたら、と願っています。

キャリア教育コーディネーターを目指す方へのメッセージをお願いします。

キャリア教育は、教育現場の中でこれからも重要な役割を果たしていくと思います。ただ、どんなことをしていけばいいのか見えにくいものでもあるので、研修や資格取得までの学びの中で、教育現場についてまずは知っていただきたいです。そして1人でも多くの方に教育現場に携わっていただき、1人でも多くの子どもたちの「生きる力」につながるキャリア教育を、広げていってほしいです。そのためにも、学びはずっと続いていくので、資格を取得した後も、多くの人と関わり合いながら、キャリア教育の必要性と継続していくことの重要性を感じていってほしいと思います。


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研修には、キャリア教育の基礎基本を学ぶ「キャリア教育実践基礎講習(エントリーコース)」と、学校現場でコーディネートの実践力をつける「実践コース」があります。

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